恋の始まりはいつだって唐突に
部屋着の上に、ソファに置きっぱなしにしていたカーディガンを羽織る。
普通だったらこんな格好では会えないけど、こういう時なんだからしょうがないだろうと言い聞かせ玄関へ向かう。
鍵を解除してドアを開けると、見慣れた顔があった。
「おう」
「掛井さん、」
「大丈夫か?」
見慣れない、私服姿の掛井さん。薄手のVネックのニットに、細身の黒のパンツ。
シンプルな恰好なのにそれだけで十分素敵に見えるのは、やはり元々の素材の良さなのだろう。
「風邪、こじらせちゃったみたいで。すみません」
「いや、一人だと色々キツイだろ。適当に買ってきたから」
はい、袋を差し出される。駅前にあるチェーン展
開しているドラックストアの袋だ。
……優しいな。
掛井さんはいつでも優しいけど、こんな時だからこそより心に沁みる。
ありがとうございます、と受け取ろうとしたその時だった。