恋の始まりはいつだって唐突に


咄嗟に支えた体のあまりの熱さに驚く。

目を閉じ、浅い呼吸を繰り返す片岡は苦しそうな表情を浮かべている。



「片岡」


小さく呼びかけると、すみません、と小さな声で返ってくる。
喉が痛むのか、顔が歪む。



「悪い、中入るぞ」

念のためそう伝え、自分にもたれかかっている片岡を横抱きにする。

体の軽さにまた驚く。


少々乱暴に靴を脱ぎ、中へと進む。


正直、相手の許可なく家の中に入るのは気が引けるがこんな状況なので仕方ないだろう。
玄関を上がってすぐにあるキッチンを抜け、部屋へと続く扉を開ける。




そのまま窓際のベッドへ進み、ひとまず横たわらせた。そこで片岡の目が薄く開いた。


「掛井さん、」

あまり焦点が合っていない目でこちらを見上げる。


「悪い、勝手に入って」

顔にかかった髪を梳いてやりながらそう謝ると、片岡は声を出さず小さく首を振った。


「今日何か食べた?」

ベッド際に置いてあった体温計を渡しながらそう尋ねると、これにも首を振る。



ここに来る途中にあったドラックストアで風邪薬を買ってきたので飲ませたいが、そうなると少しでも胃に何かを入れておきたい。ゼリーやレトルトのおかゆなどは買ってきたが、食べてくれる
だろうか。


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