恋の始まりはいつだって唐突に


つるんとした感触が喉を通る。ひんやりと冷たいそれは、熱が籠った体に気持ちいい。


ゆっくりと時間をかけ半分ほど食べたところでおなかがいっぱいになってしまい、掛井さんを見る。

食べきれないことを察したのであろう掛井さんは私からゼリーを受け取り、代わりに風邪薬を渡してくれた。

早く効きますように、と心の中で呟き、再びベッドへ戻る。




「……今日、すみません」


布団から掛井さんを見上げ、謝った。せっかく出掛ける予定だったのに、こんな状態だ台無しだ。


するとベットの脇に座っていた掛井さんはちらりと私の顔を見ると、小さく笑った。




「別に謝ることじゃない」

「でも、」


「別に何でもよかったんだ」



どういうことだろう、とつい黙ってしまう。



しばらくそうしていると、俺はな、と掛井さんが口を開いた。




「片岡と一緒にいたいだけだったから、そういう意味では目的は果たせてる」



もちろん、お前が元気な方がいいけどな。


そう言って、大きな手で私の頭を撫でた。




その感触に心臓の奥の方から、じわっと体が熱くなる。


どう名前を付けたらいいかわからない感情が頭
の中を巡る。


どうしよう。また熱があがったかも。

この風邪はなかなかしぶといかも。



……なんて、自分と気持ちに気づかないフリをして、私は再び目を閉じた。




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