恋の始まりはいつだって唐突に
どうしてよりによってこのタイミング。
残業続きで疲れた体は、早く帰りたいと悲鳴をあげているというのに。思わず小さなため息がでる。
そしてそのため息の正体はそれだけれはなかった。
三岡さんが思いを伝えている相手。
高い背丈とその体にぴったりと合う上質なスーツ。切り揃え得られた髪、そして、手首に光るセンスの良い腕時計。
うん、やっぱり掛井さんだ。
私より6つ年上にあたる彼は、同じチームの上司にあたる。
私が新入社員として入社した頃、それはそれは厳しく教えてくれた先輩だった彼が正式にチームリーダーとなったのは半年前のこと。
またか、と内心思う。
実はこういった場面に出くわすのは今回が初めてではないのだ。なんて言ったって彼はモテる。
誰もが認めるその容姿に加え、仕事が出来る。特別愛想が良いというわけではないけれど、面倒見が良くて部下からの信頼も厚い。
そんな彼を社内のお姉様方が彼を放っておくわけがなく、結果こんな場面に遭遇してしまうのだ。
タイミング、悪すぎ。