恋の始まりはいつだって唐突に
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冷たいビールが喉を潤す。
いつもはもっと美味しいのに、なんだか今はそれを感じることが出来ない。なぜこんな状況になっているんだろう。
そう、あの後。
あんな場面を目撃してしまい咄嗟に身を隠したわけだけど、私の努力も虚しく、なんともあっさりとばれた。
三岡さんの告白は最低限の言葉数で断られた。
あの三岡さんですら断ってしまうなんて、と呑気に考えていたことが間違いで。
気が付けば身を隠していたドアを開けられ、恐る恐る顔を上げると掛井さんが呆れた表情で私を見下ろしていた。
「覗き見か」
「……たまたまです」
「飯行こうぜ」
「今からですか?」
「腹減った。どうせ何も食べてないんだろ?」
「今日は用事が」
「まぁ、人のあんな場面見ておいて、」
普通断れないよな、と意地の悪い顔で掛井さんが言った。