恋の始まりはいつだって唐突に
「私だったらそんな普通じゃいられないです」
「そういうもん?」
「だって告白なんてあんまりされたことないですし。やっぱりドキドキしちゃいますよ」
「何とも思ってない相手でも?」
「そうですねぇ、たぶんそれからめちゃくちゃ意識しちゃって気づいたらこっちの方が好きなっちゃいそうです」
って、何だこの話。
ふうん、と揚げ出し豆腐を口にする掛井さんを見て、ふと我に返る。
そもそも掛井さんと私が同じ土俵で話せるわけがないだろう。
「すみません、何の話だって感じですよね」
「いや、いい情報が聞けた」
思いがけない言葉が返ってきて、思わずむせそうになった。
たぶん大した意味はないだろう。
そう思うのに反してだんだんと顔が熱くなる。
「ちょっとお手洗い行ってきます」
なんとなく掛井さんの顔を見ることが出来なくて、思わずその場から逃げるように離れた。