恋の始まりはいつだって唐突に

「お前、東上線だよな？」

席に戻ると、唐突にそう聞かれたので頷く。


「運休だって」

こちらに向けてくれたスマホの画面を見ると、そこには赤字で”運休”の文字。

どうやら一時間ほど前に電気系統のトラブルがあったらしく、電車が止まってしまっているとのことだった。


「”本日復旧の見込み無し”……うわぁ、どうしよう」

「他の路線は？」

「私の家の方、この路線しか通ってないんです」


これは困った。電車の遅延や運休なんてよくあることだけど、帰宅時間と重なってしまうとどうも気が滅入る。



「悪い、今日タイミング悪かったな」

申し訳なさそうに言う掛井さんに慌てて首を振る。

「どうせこの時間だとあれからすぐ帰ったとしても重なってました。電車の中に閉じ込められるよりよっぽどマシです」


せっかくなんであともう一杯飲みたいです、と付け加えると安心したように彼が笑った。