恋の始まりはいつだって唐突に
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気が付けば11時をまわっていた。
さて、これからどうしようか。
ここからだとタクシーでもかなりの時間がかかってしまう。お給料日前の出費にしては痛すぎるのでそれは却下。
そうなるとホテル。でも金曜の夜だし、空きがあったとしてもそれもそれで大きな出費だ。
「結構な時間になっちゃったな」
店から出てきた掛井さんが呟く。
「ごちそうさまでした。いつもすみません」
「いや、それより電車は?やっぱり駄目?」
「そうですね、やっぱり今日は難しいみたいで。残念ですけどしょうがないです」
「どうする?」
「タクシーだと高くついちゃいそうなんで、朝までネットカフェで過ごします」
色々考えた結果、それが一番だろう。ネットカフェなら個室だし、少しくらいなら仮眠出来るはずだ。そう伝えると、掛井さんは複雑そうな表情を浮かべた。