貴方になりたい
それでも、聖光が好き。


確かに、始まりは不倫。だけど、聖光は奥さんに嫌気がさしてそういう事をしただけかも知れない。

そうだ。聖光は私に癒しを求めていたんだ。

そう思った瞬間だった。


聖光の方に寄って来たやたら綺麗な女が、聖光が遊んでいた女の子を抱き上げた。

幸せそうな聖光の表情から目が離せないでいると、目が合ってしまった。

聖光は一瞬だけ驚いた表情を見せたが、私には気付かないフリで子供を抱っこした女の後を追い掛けてしまったのだ。


まるで、私は空気。

その事実に泣きそうになってしまう。


「明日香」
「う、ん?」
「たまたま、彼を見付けたから明日香を此処に呼んだの……」
「うん……」
「彼は、奥さんが大好きだから別れるつもりも無いよ……。だから、諦めよう、よ……」


奥さんが居たら別れる。

当たり前の事なんだが、私にその選択肢は無かった。


「む、無理だよ……。だって……」
「本気で彼の事が好きなんでしょ?」
「うん」


ああ、そうだ。私は聖光の事が今までで一番好き。

それは、今まで付き合った男じゃ比べ物にならない程に。


私は、聖光の奥さんが羨ましくて堪らない。
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