貴方になりたい
「せっかく綺麗なのに、びしょ濡れだね……」


そう言って、タオルを差し出されたから受け取り髪を拭いた。
次に顔や手を拭いていくと、タオルに水滴が染み込んだ。冷たい。


「ねえ」
「はい?」
「そのままじゃ風邪引くから、家に来ない?」


はっきり言ってこれがこの人の目的だったのかも知れない。
だけど、まだ男性経験すらなく世間も知らない私からしたら夢のようなてんかいだ。


彼の事が好き__


男女という物はお互い行為があるから、一緒に居たいと思う物だと信じて疑わなかった。


「い、良いんですか?」
「勿論だよ。あ、名前聞いていい?」
「明日香です……」
「可愛い名前」


そんな事より__


「私も名前聞いても良いですか?」
「聖光て言うんだ」


聖光さんか。


ずっと名前も知らない男に片思いしていて、やっと名前を知れたかのような喜びが脳裏を刺激した。


車のエンジンが掛かり、コンビニの駐車場を後にした。

彼の家に着いたのは、それから15分後くらい。

私の住んでいるチンケな建物とは全然違う、4階建てのマンションだ。




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