貴方になりたい
彼の住む部屋は3階に有り、玄関の扉を開くとオシャレなリビングが視界に入る。


「凄く綺麗……」
「俺、家具好きなんだ。
このままじゃ、風邪引くからドライヤーで髪の毛乾かしな!」
「ありがとうございます!」


脱衣所に移動すると、大きな鏡にシンプルな洗面台が有ってモデルルームみたいに綺麗だ。


聖光は備え付けの棚から真っ白なバスタオルとドライヤーを出してくれた。


「風邪引くと駄目だから、ゆっくり乾かしなよ」
「は、はい」


なんて、優しい人なのだろうなんて思いながら鏡に写った自分を見て絶叫しそうになってしまう。


すっかり剥げたメイクにペチャンコになった髪。それは、想像していた以上に酷い物だった。


急いでドライヤーをオンにすると髪を乾かしメイクを直す。
出来上がりは家出するより劣るが、十分にまともに見えたから掃除をして脱衣所を後にした。


リビングに戻ったら、聖光は炭酸飲料を飲みながら音楽を聞いて楽しそうにしていた。


惚れたよわみだろうか。
笑顔、咥えタバコ、仕草ひとつひとつがカッコ良く見えて仕方がない。


「明日香!メイク直したの!?」


私に気付いた聖光は直ぐに変化に気付いてくれて、女心を刺激する。
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