観念して、俺のものになって
私はそれらを満たすためにのろのろと立ち上がる。
とにかく、今は不安になって思い悩んだって仕方がない。
明日紬さんに、また会いに行こう。
そして、こんな馬鹿げた結婚は無効にしたいこと、ストーカーに追いかけられたこと、
それから、もう私を巻き込まないで欲しいことを伝えて、彼と会うのはできれば明日で最後にしよう。
ガゼッタはお気に入りのお店だから、
通えなくなるのは残念だけど……自分の身の安全の方が大事だ。
鞄を下ろすと、昨日と同じようにその中から仁科隆聖先生の文庫本が顔を覗かせる。
紬さんと見た、夢のような月の美しさを思い出したくなくて、私は表紙を無言のまま裏返した。