観念して、俺のものになって
「芦屋、これ俺の請書だよな?」
「あ、はい」
「……注文数ちゃんと確認したか?
桁が1つ多い」
「えっ、ほんとですか!?」
「ここの担当者の人、すごく神経質だからこんなの送ったら速攻でクレームの電話入るぞ?まあ、俺が対応するからいいんだけど」
「……す、すみません、すぐ直します!」
慌ててその数を見直すと、確かに市東さんの言う通り数が間違っていた。
ああもう、何やってるのよ。
こうした書類関係にもきちんと目を通す市東さんがたまたま見つけていなければ、きっと私はそのまま間違った注文請書をお客様に送っていただろう。
俺が対応するからって言うけど、市東さんの手を煩わせる訳にはいかない。
こんな凡ミスしちゃうなんて……
朝から底を這っていた気分が、さらに落ち込んだ。
「……芦屋?悪い、もしかして言い方キツかったか?」
そう声をかけられて、顔をあげる。
市東さんは少し膝を折って私と目を合わせ、お日様みたいな笑顔で笑いかけてきた。
「何があったかは分からないけど、芦屋は可愛いんだから笑ってた方がいいと思う。課長とか、オッサンたちも『今日は芦屋ちゃん元気ないなあ』って心配してたし」
「……あはは、そんなこと言っても何も出ませんよ」