観念して、俺のものになって


きっと数日前の私が、営業成績トップで人格者でもある市東さんから誘われていたら飛び上がりそうなほど喜んで、すぐに彼と食事に行っていただろう。


お日様みたいな笑顔が魅力的の、誰にでも優しい市東さんから好きだと言われて嬉しくないはずがない。


注文数の違う請書を2つに折り畳み、
私はそれをシュレッダーの口へ差し込む。


でも、今は彼の気持ちに応えることはできない。

何にも縛られていない、左の薬指に視線を落としてため息をついた。


私は紬さんと戸籍上結婚している。

役所に行って確かめたわけではないけれど、きっとあの人はタチの悪いジョークを言うような人ではないと思うの。

シュレッダーに飲み込まれた注文請書はバラバラに切り刻まれ、もうその影も形もなくなっていた。


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