観念して、俺のものになって


正しい数字に直した注文請書に会社印をつきながら、何度目かのため息をついた。


とにかく、今日こそは紬さんと話をするんだ。


昨日路地をひたすら駆け抜けた、あんな思いは二度とごめんだし、そもそもこんな状況は絶対におかしい。


好きでもない同士が結婚したって、お互いが幸せになれるはずなんてないでしょ。

ストーカー女に私が付きまとわれるのも、よくよく考えたらおかしくない!?

だんだんストーカー女が怖い、とかそういう感情より紬さんに対して腹が立ってきた。


今更たられば言ったってどうしようもないんだろうけど、元はと言えば紬さんがあの女性の目の前で「彼女と今から入籍しにいきます」なんて宣言しなければ、私が目をつけられることもなかった。

婚姻届を出したりしなければ、婚姻届無効の調停について考えることも無かったよ。


それに入籍だって、私みたいな平凡な女ではなく、ヤツの顔面が好きであの性格に耐えられる積極的な女性としたらいい話だ。


危ない、流されるとこだった。

やっぱり全部あの人のせいじゃない!


そう思い直すと、頭の中の脳内紬さんが「チッ」と舌打ちしたのが聞こえた。


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