観念して、俺のものになって
何もないって分かってるはずなのに、
本当は私なんかより美人で可愛くて、紬さんをよく理解していている女性が他にいるんじゃないの?って心の狭い考えが脳裏をよぎる。
なんでよりによって、何も知らない私と結婚したのよ。
手を離した扉は、僅かに音を立てたらしい。
レジカウンターにいた紬さんは、
ハッとしたようにこちらを見た。
私は彼の視線を避けるように顔を逸らし、そのまま踵を返して階段を駆け上がる。
頭の中はぐちゃぐちゃだ。
どうして私を結婚相手に選んだの?
どうして私に優しくしたり、私の気持ちをめちゃくちゃに引っ掻き回すの?
こんな思いするくらいなら、あなたのことを好きにならなければ良かった!
……ああ、そっか。
私、紬さんが好きだからこんなに胸が苦しいんだね。
地上へ戻り、そのまま駅の方向へと駆け出そうとすると、ちょうどビルの入り口あたりに立っていた人とぶつかりそうになった。
「す、すみませ……」
謝ろうとして顔を上げると、相手はなぜか私の腕をぐっと掴んでくる。
「ひっ……!!」
私の腕を掴み上げていたのは、
あのストーカー女だった。