観念して、俺のものになって


た、助かった……!

紬さんが来てくれなかったら、私は今頃もっと痛い目にあっていたに違いない。


ホッと安堵したのと同時に、
一気に緊張が解れていくのが分かる。


女性が姿を消した大通りを冷たい眼差しで一瞥した紬さんは、くるっと私の方へ振り向く。


冷酷な視線に怯えて、ビクッと体を硬直させると、紬さんは整った眉を下げ悲しげな顔をした。

彼はそっと近づいて、座り込んだ私と視線を合わせるためにしゃがむ。


「助けに来るのが遅くなって本当にごめん……まひるちゃん、大丈夫?立てそう?」


私を助け起こそうと、
紬さんは大きな掌を差し出した。

その瞳には先ほど見た冷たい怒りはどこにも無い。差し出された手に取ってぎゅっと握った瞬間、顔をしかめる。


「痛っ!」


あー……さっき転んだ時にやっぱり怪我してたっぽい。

その時は気にしてる余裕がなかったけど、手のひらと手首のあたりにかけて、両手ともに擦り傷ができていた。


傷になった場所からはじわりと血が滲んでおり、私は先ほど同じように痛みを覚えた右膝にも視線を落とす。

割と気に入っていた黒のスラックスパンツは膝の部分が汚れ、破れていた。

裂けた生地の間からはぶつけたからなのか、赤くなった膝が見えている。



紬さんもそれに気がついたらしい。意志の強そうな片眉を跳ね上げ、眉間に皺を寄せた。


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