観念して、俺のものになって
断ろうとする私の腰に彼の腕が回され、グイッと至近距離まで引き寄せると耳元でアプローチしてくる。
「俺はね、少し抜けてて馬鹿だけど優しいきみのことを心の底から愛おしいと思っているんだよ。もちろん、他のやつに渡す気は更々ない。
今夜はまひるちゃんを独り占めしたいんだけど、駄目……?」
うっ、イケメンにそんな熱烈に口説かれて落ちない訳がないじゃない。
ズルい、ズルいよ!!
彼の言葉にぼっと顔を熱くしたまま、私は悲鳴のような声を上げる。
「そっ……そんなこと言ったことなかったじゃないですか!!」
「まひるちゃんは本当に残念だね、嫌いな女と結婚するはずないでしょ?」
「ちょっ……私の気持ちは?」
「収入も安定してて将来有望な俺のことを振る女なんているはずないからね」
「こ、このナルシスト!!」
そう叫んだ私の唇に紬さんは再びフレンチキスを落とした。
ちゅっ、といリップノイズをさせながら唇を離した紬さんはしてやったりという風にニヤッと唇を持ち上げる。
「どうも」
その顔に一瞬見惚れてしまった私は我にかえり、悔しさに奥歯を噛み締めた。
ぐ、ぐぬぬ……!!
紬さんはまた指先を絡ませて、いつもコンビニへ向かう道とは逆方向へと私の手を引く。
「こっち」
「えっ」
「言ったでしょ。おうちにかえろうって」
「えっ、でも……!!」
「ほら、おいで」
それでも無理やり私を引っ張って行ったりはしない、優しいんだか優しくないんだか分からないその手を見つめる。
なんだかんだ言いながら、最初から紬さんに巻き込まれてきた私は、きっとこの手から逃れることは出来ないのだろうな、と諦めたようなため息をついた。