観念して、俺のものになって
ちなみに、私のアパートは玄関ドアにチェーンロックを掛けるだけ。
……ストーカーの女の人に追いかけられた時、家のポストを覗くことすら怖くて『紬さんはいつもこんな思いをしているのかもしれない』なんて思ってたけど全然世界が違ったな。
私ももっとセキュリティがしっかりしてるとこに引っ越すべきか、と遠い目で虚空を見上げた。
「まひるちゃん、何してるの?
ほら、行くよ?」
紬さんが私の肩を叩き、開いた自動ドアを一緒に通り抜けると……
その先にあったのは、まるでホテルのロビーのような広い空間だった。
真っ黒な梁を見せるようなデザインの天井は高く、温かい色の白色灯が煌めいている。
床には一面真っ白なタイルが貼られていた。
一見したところ、広さは大体50坪ほどだろうか。空間のあちこちにはローテーブルと座り心地の良さそうな椅子が向かい合わせに配置されている。
ロビーのさらに奥にはこれまたホテルのフロントのような大きなカウンターと、そこに立っているスーツの男性が見えた。
「望月様、おかえりなさいませ」
いや、ここは高級ホテルか何かなの!?
スタッフの方に深々とお辞儀をされて、私は慌ててぺこぺこ頭を下げる。
そんな私と対照的に僅かに頭を下げた紬さんは、そのままエレベーターホールへと私を連れて行く。
慣れた様子で紬さんがエレベーターの操作盤を押すと、『ポーン』という音とともに扉が開いた。
彼に連れられエレベーターに乗り込んだ一般庶民の私は、思わずこのマンションは何階建なのかな、と操作盤の最上階を確かめてみる。
……へぇ、ここって24階建なんだ。
ぼんやりと思っていると紬さんは何とその最上階の階数ボタンを押した。
「えっ、最上階ですか?」