観念して、俺のものになって
目を丸くしているとエレベーターが動き始めて、両足にぐっと重力がかかった。
「そうだよ」
それが何?的な顔をしているけど、私からすれば充分すごいよ!
一番上の階って高収入な人が住むイメージあるから、紬さんは自分で言ってたようにある程度の収入があるってことか……だからと言って、露骨に態度を変えることなんてしないけどね。
紬さんは私をちらっと見下ろし、「一番上の階なら、まひるちゃんでも覚えられるでしょ?」と片眉を上げ私のことを鼻で笑った。
それにカチンときた私は紬さんを睨む。
「馬鹿にしないでください!割と記憶力には自信あるんですから、多分!」
「……ふーん、本当に?まひるちゃんってぼーっとしてそうだから一回通った道でも迷ったり、暗証番号とかも忘れてロックかけたりするタイプなんじゃない?」
「そ、そそそんなことないですよ!!?」
そう言い返したものの、実はものすっごく方向音痴だしロックも何度かかけたことがあるとは言えずに、何となく目を逸らす。
「……ならいいんだけど。はいこれ」
ふと、紬さんは私に何かを手渡してきた。
何も考えずに受け取り、掌を開くとそこにあったのは先ほど彼が入り口でかざしていた鍵だ。
「えっ、これって……」
ぽかんとしていると、紬さんは鍵ごと私の掌を優しく包み込んで目を合わせ、小さな子供に話しかけるようにゆっくりと言った。
「俺の部屋番号は、5、8、0、6だから明日からはそれで入って。万が一、忘れたらすぐ聞くこと。何回も間違えたら防犯用にブザーが鳴るから」
「え、え!?」