観念して、俺のものになって
そう言い返そうとした瞬間───世界がぐるりと回った。
天井からぶら下がる珈琲色のペンダントライトが目に入る。
私の両肩を押し倒したのは、
当然笑顔を浮かべた紬さんだった。
ひゃあ、紬さんの顔が近すぎる……!!
吐息がかかりそうな程、至近距離まで彼の彫刻のような美しい顔面が迫っているのが分かり、ドキドキと心拍数が急上昇した。
今までそれなりに男性と出会って、お付き合いしてきたけど紬さんはその中でも圧倒的にビジュアルが神。
こんなの、美の暴力だよ!!
ていうか、私より睫毛長いし肌まで綺麗ってどういうこと!?
多分、スキンケアしてるのかな。
この人の事だからこだわっていそう。
なんて、緊張でつい余計な事をぐるぐると考えてしまう。
彼はふっくらとした唇の両端を上げ、優しく私に微笑みかける。
しかし、その真っ黒な瞳は全く笑っておらず私は頬を引き攣らせた。
「きみは本当に頭が弱いね。
……ベッドの中で他の男の話を聞かされて、冷静でいられる男がいるとでも思った?」
そう言いながら、紬さんは私に覆いかぶさってくる。
「貴方に比べたら、私の経験なんて大したものじゃないですよ」
だって、そうでしょう。
これほどの美青年なら女性に困らなかったはずだし、引く手数多だったと思うから。