観念して、俺のものになって
「確かに、俺も多少経験はあるけど心の中には常にきみがいた。もう一度会えたら、この想いを伝えようと思っていたんだよ」
私がそろりと視線を上げれば、紬と目が合う。そこには優しく笑う姿があった。
“君の最初で、最後の男になりたい”
あまりにもストレートな物言いに、「ひえっ」と情けない声が出てしまう。
それでも、自分より一回りも大きい男の人に組み敷かれて、手は掴まれたままだから逃げる事は不可能だ。
こうなるのは覚悟していたから逃げたい、とは思ってはいないけれど、それでも彼の気持ちは私が思うよりずっと強くて、重たい。
それが嬉しいと思ってしまうから、救われないなぁ。
紬さんがすっと目を細めて梓を射抜いた。
その瞳の色に浮かぶ劣情に、私の背中にびりっとした痺れが駆け抜ける。
今夜、君の全てを手に入れたい。
明け透けな想いを口にした紬さんに私は頬を引きつらせた。
今更断ることなんて出来ないし、
彼もわかっているのだろう。
捕食される恐怖より好きな人と一つになれる期待に心が震えるのだから、やっぱりすくわれない。
でもそれ以上に幸せだと思えるから、頷く以外の返しが出来るわけなかった。
私は口答えするのを諦めて、仕方なく瞼を下ろした。