観念して、俺のものになって
布シーツで覆われた、薄暗い巣の中で。
いつか肉食獣のようだと思ったそのカラダに再び組み敷かれた私は、飢えた獣に口づけられる。
柔らかい唇の隙間から差し込まれたのは、苦い煙草の味がわずかに残った肉厚の舌だった。
「っ!!」
それは私の頬の裏側をひと撫でして、左の奥歯が納まる歯茎と頬の裏側の濡れた肉をぬるりとなぞってゆく。
ぞくぞくクるような感触に体を捩って逃れようとしたけど、上にのしかかった獣はそれを歯牙にも掛けず腕の中に収まった獲物を貪った。
普通にキスのテクがすごくて、
私は既にとろとろに溶かされていた。
経験少ないって言ってたの嘘でしょ!
左側をなぞったその舌は、そのまま右の奥歯の根元へとゆっくり移動していく。
体の奥に隠された情欲を暴き立てるようなそれが怖くて、覆いかぶさる紬さんを押し退けようと彼の肩を押した。
しかし、その大きな身体はびくともしなかったため、必死になった私は次に彼の衣服を引っ張る。
さらさらした感触のそれは、どうやらバスローブのようなものだったらしい。
引っ張った拍子に帯が解けてしまったのか、そんなに力をこめていないのに紬さんの胸元はひどくはだけてしまう。
ただでさえ色気がやばいのに、さらに増してダダ漏れになっちゃった。
焦った私は舌の動きだけでもやめさせようと、彼のそれを自分の舌で押し返そうと試みた。
「……ふっ」
そんな私の考えは、どうやら彼にはお見通しのようで。
私のことをまたも鼻で笑った紬さんは、押し返そうとした私の舌にそれを絡ませ、根本から舐め上げた。
「んんっ、うぁ……!」
舌の裏側を舐め溶かされた私は思わず紬さんの肩に爪を立てる。
彼はそれにも構わず、じゅるりと私の舌ごと漏らした唾液を啜り上げた。
わたしの知っているキスとは全然違う、熱くて激しい、ほんとに食べられてしまいそうなキス。
くらくらしてきた私は爪を立てたその肩へと縋り付き、彼にされるがまま身を預ける。
私の口の中がぐちゃぐちゃにかき回されて、彼の舌と同じ温度になったころに紬さんはやっと唇を離した。