観念して、俺のものになって
「……そう?
必要なことは言っていると思うけどな」
自らの柔らかい唇を触りながら紬さんはニヤッと笑う。
私は頭二つ分背の高い彼を少しだけ睨んだあと、ぷいっと顔を逸らした。
「紬さん、気づいてます?
今まで一度もプロポーズとかしてないの」
彼はふっと吐息だけで笑って私の耳元へと顔を寄せ、カメラマンさんに聞こえないような声で囁く。
「毎晩いっぱい可愛がってあげてるのにね……きみは欲しがりだね」
だから、その声はズルいんだって!
カメラマンさんから見えないように私の腰に触れる。
昨夜の秘め事を漂わせる厭らしい触り方に、びくっと体を震わせ顔を赤くした。
「……ひ、必要な言葉もあるんです!!」
彼を再び見上げて言い返すと、紬さんは少年みたいに顔をくしゃっとさせ笑う。その表情に胸をドキドキさせながらも、私は唇をへの字にする。
今日という今日こそはその笑顔に騙されないんだから!