観念して、俺のものになって
私の顔を見下ろした紬さんは、そのままカメラマンさんの方を向いた。
いつの間にか確認は終わっていたらしい。カメラから顔を上げた彼はこちらを向いている。
うわぁ、カメラマンさんの前でいちゃついてしまったのかと恥ずかしくなって頬を押さえる。
紬さんはカメラマンに対して穏やかに声をかけた。
「すみません。これから撮っていただきたい写真があるんですが、いいですか?」
「え?あ、いいですよ」
……一体何をするつもり?
紬さんは唇の両端を持ち上げ、甘い声で囁いた。
「必要な言葉ね……
じゃあ、最初からやり直そうか?」
「さ、最初から?」
言葉の意味がわからず?マークの私と向かい合い、紬さんはまるで忠誠を誓う西洋の騎士のように跪いた。
そして、顔を上げこちらの瞳を見つめながら私の手を温かい両掌で優しく包み込む。
彼はにっこりと口角を上げ、爽やかな笑みを浮かべた。
彼の口元には色っぽい黒子があり、私はいつもと同じようにそれに目を奪われる。そのまま紬さんは私の手の甲に、唇を優しく押し付ける。
カメラのシャッター音が遠くで聞こえた気がした。
ドクドクと心拍数を上げていく心臓が痛い。
ゆっくりと顔を上げた彼は私の瞳を見つめ、口元の黒子を持ち上げて怪しく微笑む。
腰にぞくぞくクるような、
極上の声で彼はプロポーズした。
「初めまして、芦屋まひるさん。
俺と結婚してください」