観念して、俺のものになって
すると、会計の順番を待っていた彼女が近づいてきて伝票を渡してくる。
「お会計1045円でございます。
ちょうど、お預かりしました。いつもご来店ありがとうございます」
お得意の営業スマイルでレシートをまひるちゃんに差し出そうとした時、ふと閃いた。
⋯⋯お、今がチャンスじゃないか?
彼女に再会できたとは言え、注文を聞く以外タイミングが掴めなくて全く話しかけることが出来ずにいた。
まひるちゃんの方から声を掛けてくれるのを密かに期待してたんだけど、向こうは俺のことを覚えてない、もしくは忘れちゃったみたいだ。
まぁ、あの時よりだいぶ痩せてイメチェンもしたから気づかないのも無理はないけどさ。
とにかく、このまま何も発展しないのは嫌だから俺から仕掛けてみようと思う。
自慢じゃないけれど、俺が笑いかければ大体の女性は俺を見つめて顔を赤らめる。
助け舟を出してくれたことだし、ちょっとサービスしてあげよう。
そう思って、今度は愛想笑いじゃないとっておきの笑顔をまひるちゃんに向けた。
「こちらこそ、いつも美味しいコーヒーをありがとうございます!」
それなのに彼女は、ちっとも照れやしない。ニコッと笑い返し、お礼を言ってきた。
俺は思わず特上の微笑みを引き攣らせる。