観念して、俺のものになって
結果的に、その考えは間違っていなかった。
ただ、それは俺の想像とは全く違っていたけど。
「……芦屋!おーい、芦屋じゃないか!」
急行停車駅で電車に乗ろうとしたある日。
まひるちゃんの名を呼ぶ声がして、俺は振り向く。
沢山の人々が行き交う駅のホームの中。
会いたくてたまらなかった彼女は、俺がたった今通り抜けたばかりの改札の少し手前にいる。
彼女を呼び止めたのはこんがりと日焼けした、いかにもデキる男風な雰囲気を隠しもしない、鼻につく感じの男だ。
「……あれっ、市東さん!?
こんなところでどうしたんですか?」
まひるちゃんは立ち止まり、
笑顔でそいつと話し始めた。
「チッ」
思わず、見たくないその光景に舌打ちする。
市東さん、と呼ばれたその男はへらへらとだらしなく笑いながら、あの子を物欲しそうな目で見下ろしていた。
同じ職場なのか知らないけどさ。
まひるちゃんは俺のものだから、
そんな目で見ないでくれる?
「この近くの海門建設さんのところに資料を届けに行くところでな。芦屋はここから職場まで通ってたんだな!⋯⋯その、もし時間があったらその辺で朝食でもどうだ?」
男の言葉にあの子は驚いたように目を見開く。