観念して、俺のものになって
あの子にぶつかろうと勢いよく歩いていた俺は驚いて立ち止まる。
俺にぶつかってきた人影は逆に弾き飛ばされ、そのまま飛び出てきた柱にぶつかり座り込んだ。
相手はどうやら年上の女性のようだった。
⋯⋯ああもう、邪魔が入ったせいでまひるちゃんを見失ったじゃないか。
俺は彼女の方を伺っていたとはいえ、ちゃんと前を見て歩いていたはずだから、絶対に飛び出してきたのは相手の方だという確信がある。
でも、このまま知らないフリをして後から騒がれても面倒だ。
舌打ちしたい気持ちをなんとか抑え込んで、口を開く。
「……大丈夫ですか?」
手を差し伸べると、座り込んだ女性は顔を上げた。
俺はそれを見て眉を寄せる。
うわ、この女……店でよく俺に話しかけてくる面倒な常連客だな。最近つけてくるストーカーと言うのもコイツ。
わざとぶつかってきやがって、サイアクだ。
「は、はい……あら?
あなたはもしかして……」
女は俺を見て目を輝かせ、明らかに取ってつけたような台詞を吐いた。
女のじっとりとした目で見つめられた俺は店でよくそうするように唇だけを持ち上げる。
座り込んだ女は差し出した俺の掌をぞわぞわするような手つきで掴んだ。
その感触に鳥肌を立てる。
僕はそのまま女を気遣うフリを続けながら、目の前の女に悟られないようため息をつく。