観念して、俺のものになって


こめかみ、目の端、頬、鼻の先と一つ一つの形を確かめるように唇を降らしていけば、まひるが薄目を開けてじっと自分を見つめている。

ああ、目の前の愛おしい女性は紛れもなく俺のものだ。


息を奪うように唇をまるごと食めば、また苦しそうな声が耳に届いた。

それさえも甘さを含んでいるような気がして頭の中がクラクラする。舌で唇をノックして、薄く開いた隙間から口内へと侵入した。


歯列をなぞり頬の粘膜を舌で撫でてから、さらに奥へと進んでいく。上顎を執拗に舐めて、引っ込んでいた彼女の舌に自分の舌を絡めて引っ張り出す。

吸い付くように舌を捉えれば、苦しさからか彼女の目の端から涙がこぼれた。

その一雫さえ逃すのが勿体ない。

親指でそれを掬えば、まひるの茶色の瞳がまた姿を現した。




「まひる、まひる」

驚くほど自分の声に熱が宿っている。

好きとか、愛してるとか、そんな言葉を形にするよりよっぽど分かりやすい声色に彼女の頬が赤く染まっていった。
 

恍惚と目を細めて、俺はつながった透明の糸を切り離してからまひるの首元に顔を埋める。


まだ足りない。
もっと、もっと彼女が欲しい。

俺の色に染めあげたい。


首筋に舌を這わせて上へ上へと移動していく。顔の輪郭を通り、耳裏まで辿れば柔らかい耳たぶを口に含んだ。

耳上部の複雑な溝を舌先で巡り、耳の中へと侵入すればまひるが「まって、やめ、っんあ」と甘く制止する声をあげる。

それが可愛くて仕方なくて、もっと聞きたくて、俺の口端が意地悪く釣り上がった。


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