観念して、俺のものになって
「うるさいなあ、今日じゃないけど埋め合わせはするって言っただろう。……それに僕が早上がりしなかったらどうなってたと思う?」
それは確かに……1人になった隙を狙って、確実にあの女性に絡まれていただろうなと言うのは予想できる。
「いや、そもそもあなたが私を巻き込まなかったらこんな思いすらしなかったわけで!」
「……分かってるさ。君を危険な目に遭わせないように送るって言ったんだよ」
一応私の事を考えてくれていたのか。
……ふーん。実はいい人なのか性格が悪いのか、どっちなのよ。
1度離した手を再び繋がれて、変にドキドキして意識してしまう。
「あの、手まで繋がなくていいんじゃ.....わっ!?」
私が口を開いてすぐに、信号が青になった。
周りの人たちと一緒に、私の手を握り直した店長も歩き出す。
また彼に引っぱられ、言いたかった彼への文句が私の中で乱れる呼吸とともに消えていった。
「ん、何か言った?」
「.....ナンデモナイデス」
ううっ、なんか悔しい!
唇を尖らせていると、店長はちらっと私を見下ろし笑った。
「ほら。駅の改札まではあと少しだ、急ぐよ」