観念して、俺のものになって
店長はそう言い放った後に大股で歩きはじめた。
私はそれについていけず、一緒に歩いているというより彼に引きずられながら駅の改札を抜ける。
改札を通り抜けた店長は次の電車を確認しようと、歩みを止めずに駅の電光掲示板を見上げた。
掲示板の表示がパッと切り替わる。
ちょうど、今から到着する電車の表示が消えた。
「今走ればギリギリ乗れるよ!」
「ええっ!?む、無理……!!」
日頃の運動不足のおかげで、私はすでにバテバテだと言うのに、店長は私の手を引っ張ったまま走り出そうとする。
たまには運動しないと、体力が無さすぎてヤバいな。
「ほら、頑張って!走れば撒ける!」
なんで休日に、こんな疲労困憊しないといけないの~~!?
心の中で悲鳴を上げざるを得ない。
店長の熱血コーチのようなセリフに、辟易しながらも仕方なく走った。
本当はいけないけどエスカレーターを駆け上がり、息を切らして到着したホームにたどり着く。
電車はかろうじてまだいた……けれど、扉は無情にもぷしゅうと音を立てて目の前で閉まる。
「あーあ、あと少しだったのに」
隣からそれはそれは残念そうな声が聞こえてきて、悔しさに身悶えした。
今絶対この人、私のせいで乗れなかったって思ってるでしょ!?
店長は私と手を繋いだまま、先頭車両の方へと歩きはじめた。
チラッと電光掲示板を確認すると、次の電車まで約3分。
かなり急いでここまで到着したけど、あの女の人は追いかけてきているのか。
私たちの登ってきたエスカレーターを何度も振り返るが、先ほどの女性の姿は見当たらない。
「……流石にこんなとこまで追いかけては来ないんじゃないですか?」