観念して、俺のものになって


電車に乗る前の店長と同じ様に、チラチラと私たちの後方を映すショーウィンドウを確認しながら歩く。


残念ながら、店長の言う通り女性はずっと私たちを追ってきているようだった。


「……く、区役所に入ったらどうするんです!?」


早足で歩きながら、彼に尋ねる。

変に声が裏返って恥ずかしい。


店長は眉間に手を当て、表情を歪ませていた。

いくらストーカーに慣れている店長でも、今回はあまりにもしぶといからお手上げ状態といった感じだ。


「……正直、ここまで付けてくるとは思わなかったよ。とりあえず婚姻届を書くフリをして、時間を稼ごう。あの女に本当に提出したと思わせれば、今日のところは諦めるかもしれない」


「ええ、まさか本当に出すんですか!?」


思わずぎょっとして大きな声で問い返すと、彼は自分の人差し指を唇に当てた。


その仕草だけでも、格好良いと思ってしまう。

きっと何をしても様になるんだろうな。



「しっ!……ストーカーって言うのはね、簡単に諦める様なタイプじゃないからなるんだよ」


おお.....経験者の言葉は重みが違う!


酸っぱいものを食べた時のように顔をしかめた私を見て、彼は私から顔を背けて吹き出した。

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