観念して、俺のものになって
店長は私の質問には答えず、唐突に立ち止まった。
でも、その視線は私ではなく天井からぶら下がった窓口案内の白いプレートに注がれている。
目的の文字が書かれた場所を見つけたらしく、店長は再び歩き出す。
「ねえ、聞いてます?」
私を引き摺り回す腕を引っ張り返すと、店長は「チッ」と舌打ちをした後に足を止め、上から無表情で見下ろしてきた。
何その顔、感じ悪っ!
カフェで働いてる時と、全然態度が違うんだけど。
店長目当てで通っている他の女性客が、これを見たらどう思うだろうね?
「……逆に聞くけど、あの女がここまで追いかけてこないって保証ある?」
「そ、それは……」
私は顔を青ざめたまま、ふるふると首を振る。
今まで何度か被害に遭ってきたと言ってたから、念入りにシミュレーションしていたのか。
緊張からか、彼と繋いだ手がじわりと湿る。
その汗を拭うために手を離そうとすると、店長は離さないと主張するかのようにしっかりと繋ぎ直した。