観念して、俺のものになって



「申し訳ありませんが、お客様に個人的な連絡先をお教えすることはできません。以前にもお伝えしたはずです」



常に笑顔の店長さんも、この時だけは硬い表情をしていた。

マダムの言い分を冷静に切り捨てている。

そりゃ、そうだよ。というか、あの人前にも店長さんに連絡先教えるように迫ったってこと?

イケメンも大変なんだな……私は普通の顔に生まれてよかった。
おかげで、男女関係のいざこざに巻き込まれたことはない。


「お待たせ致しました、アメリカンコーヒーとシフォンケーキでございます」


私は顔なじみの女性店員さんから、注文した2品をテーブルの上に置かれ、「ありがとうございます」と言いながら2人のやりとりに顔をしかめる。


本を読んでゆったりと過ごすはずが、こんな場面に出くわすなんて。


眉を潜めたまま、私は鞄の中に入っている先ほど本屋で購入したばかりの文庫本をと眺めた。

私の趣味は読書だ。


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