観念して、俺のものになって
「……私は紬っていう店長さんの名前、すごく優しそうで素敵だと思います。
その、私も周りの人たちみたいに紬さんって呼んでもいいですか?」
今時、中性的な名前の男性もいるから『紬』という名前は変だとは思わないな。
強いて言えば、繊細そうなイメージ。
店長に尋ねると、一瞬はっとしたような顔をしてから、くしゃっと少年のような笑顔を浮かべた。
「もちろん、いいよ」
するとその時、タイミング良くポーン、という音とともに私たちの番号が呼び出された。
紬さんは私の手を再び取り、番号札と同じ番号が表示されたカウンターに向かって歩き出す。
「提出できないのにどうするんですか!?」
焦る私とは対照的に、彼は自信ありげにニッと笑った。
「僕に任せて」
……そう言うなら任せますけど、大丈夫かな。
「次の方、どうぞ」
2つ椅子の並べられた、簡素な窓口で対応してくれたのは、メガネをかけ黒髪を頭の後ろでひとつ結びにした、真面目そうな女性の職員さんだった。