観念して、俺のものになって
そんな職員さんに向かって、紬さんは婚姻届を広げて見せる。
「お忙しいところ、すみません。再提出なんてカッコ悪いことになりたくなくて、2人で書き方を聞きにきたんですが、証人欄以外に書き間違えているところや必要な書類を教えて頂けますか?」
紬さんはお得意の爽やかスマイルを浮かべた後、彼女の瞳をじっと見つめた。
……きっと彼女も私と同じく、若い男性に免疫がないのかもしれない。
たったそれだけで茹で蛸のように顔を赤くした職員さんは、メガネをくいくいと上げ下げして、私たちが書いた婚姻届にくまなく目を通し始める。
一通りチェックを終えて顔を上げた彼女は、ごほんと咳払いをしてから若干早口で答えた。
「も、問題ないと思います!」
でも、紬さんは眉を寄せて、さぞ困っているような顔を作る。
「……心配だなあ、本当に?」
私は2人のやりとりを、しょっぱい顔をしながら見つめた。