観念して、俺のものになって
「……すみません、実はそれがダメだったときのためにさっき待っている間、一枚頂いておいたんです。ポケットに入らなくて折り畳んだんですが、もう不要になったのでそちらで破棄しておいて頂けますか?」
「あ!はい、わかりました!」
困り顔になっていた男前が、自分の力で笑顔になったのが嬉しかったんだろうね。
職員さんは頬を染め、何も書かれていない婚姻届を笑顔で受け取った。
……騙されちゃダメですよ!!
この人は外面がいいだけの、腹黒なんだから!
直接は言わないけど、心の中で訴えかける。
「ありがとうございます、それじゃあまた提出する時に来ます」
紬さんは人好きのする笑顔を浮かべてから、私に目で合図を送り区役所を後にした。