観念して、俺のものになって
道端で談笑する主婦たち、にゃーとひと鳴きして道を横切る猫、日傘を差し買い物袋をぶら下げたおばさん、犬と散歩中のおじいさん。
そうした人たちとすれ違いながら、私たちはひたすら無言のまま歩く。
なにか話さなければ、という気まずい気持ちにはもうならなかった。
いつのまにか繋いだ掌の温度がお互いに馴染んで、そうしていることが自然になっていたんだ。
いつも通っている道へと視線を向けると、公園に植えられた金木犀の花の香りや、新しくオープンした書店があることに気がつく。
段々と余裕が自分に戻ってきたなと思う。
隣を歩く紬さんを見上げると、夕陽が彼のはっきりとしたシャープな顔立ちが引き立たせていた。
分かっていたけど、イケメンは横顔もすらも美しいんだね。
睫毛長っ!
さっきまで紬さんに引き摺られるように歩いていたけれど、今は彼が私の歩くペースに合わせてくれていた。
……やっぱり、さっきは追いかけられていたからあんなに早足だったのか。
私の視線に気がついたのか、セイさんの瞳と目が合った。