観念して、俺のものになって
紬さんは口元のほくろを少し持ち上げると、優しく微笑んだ。
なぜか私はかぁっと顔を赤らめて顔を背ける。
こ、これはイケメンを見慣れてないからで!
決して恋したとかじゃないからね!?
なんて言い訳しながら1人で悶々としていれば、紬さんが「あ、そういえば」と前置きして話し始めた。
「まひるちゃんの次のお休みを教えてくれないかな。今日のお礼も兼ねて、埋め合わせさせてよ」
「えっ?」
「さっき言ったかもしれないけど、今日はどうしても外せない用事があって。よかったら後日、食事でもどうかな?もちろん、僕の奢りで」
「いや、でも……」
そんな話をしているうちに、自宅近くのコンビニの前に着く。
何度も通っているカフェの店長と言えども、流石に自宅前まで送って行ってもらうのは危険な気がする。
だから、私は立ち止まって「ここまでで良いです」と声をかける。
彼は唇をうっすらと上げて足を止め、まるで『よくできました』とでも言いたげに「ああ」と答えた。
向かい合って繋いでいた手がそっと離れる。
今まで馴染んでいた熱が無くなり、少しだけ冷えた掌が寂しい。
もう少し、手を繋いだままでもよかったかも。