観念して、俺のものになって
なかなか手が出せなくて、それでも一度だけ頑張った自分へのご褒美としてボーナスが出た休日に味わったことのある魅惑の香りを思い返した。
もう一度飲みたいと思っていた所だ。
それが、この人に話を合わせるだけで3ヶ月無料で飲めるかもしれないってこと!?
こんなラッキーな提案、
頷かない訳にはいかないでしょう!
私は店長と目を合わせ、締まりなく開きそうになる口元をぐっと噛み締め力強く頷いた。
最初は嫌だったはずが、あっさり了承してしまうほどここのコーヒーのファンなんだよね。
店長は涼しげな目元を緩ませて、ふっと微笑んだ。
それに合わせて、口元のほくろも僅かに持ち上がる。
その色気にドキッとして、なんとなく目を逸らす。
ちょうどその時、悔しそうに私と店長を見つめ、赤い唇を噛み締めていた女性が再び騒ぎ出した。
「……ちょっとあなた!
本当にツムギの彼女なんでしょうね!?」
……ツムギ?
ああ、そういえば店員さん達は彼のことを『ツムギさん』と呼んでいたような気がする。
私はこれ以上面倒なことにならないように、女性の言葉にこくこくと頷いた。