観念して、俺のものになって
「……ごめんね。我慢できなかった」
全然申し訳なさそうにしてない紬さんは、甘く垂れた目じりを、一層蕩けさせはにかんで笑う。
うわぁ、この人も照れることがあるんだ。
いつも余裕そうにしてるからレアな表情が見れた。
照れ顔すらも格好良い……いや、キュンってしてる場合じゃないっ!
「え……なに……今、キス……した?」
「あまりにもまひるちゃんが可愛かったから、つい」
サラッと言わないでよ!!
自分の顔に熱が集まるのを感じる。
「いやいや、 つい、じゃないですよ!?
私、初めてだったのに!!」
紬さんに林檎みたいに真っ赤な顔で抗議すると、彼はニヤリと笑った。
「へえ、キス初めてだったの?」
あ、余計なことまで言っちゃった。
うわ、『その歳でキスもまだって……今時、小学生でももっと進んでるよ?』って馬鹿にされる未来が見える!
「……そうですけど、何か?」
もういいや、開き直ろう。
彼氏は過去に1人だけ居たことあるんだけど、デートに行って手を繋いだだけで、それ以上の事をする前に別れたの。
だから、経験はゼロに等しい。
鼻で笑われるのを覚悟していると、紬さんは更に距離を縮めてきてとんでもない発言をした。
「大丈夫、まひるちゃんのファーストキスを奪った責任は取るよ。結婚しようか」
「ふぁっ!?」
何を言い出すのよこの人!!
ストーカーに追い回され、気が滅入って頭おかしくなったのかな。うん、きっとそうだ。
責任の取り方がなんか違う気がするし重いです。
「えっと、 お付き合いじゃなく?」
「きみが交際から、と言うならそれでも構わないよ。どの道結末は一緒だけど」
「待って、待ってください!
無理です!お付き合いなんてできません!」