観念して、俺のものになって
さあ、帰ろうと彼に促され再び歩き出す。
なんとなく別れがたくて私は何か、紬さんに話しておくことがなかっただろうかと今までの会話を思い返し始めていた。
考えてるうちにコンビニの前に到着し、紬さんはゆっくりと立ち止まる。
「それじゃあ、夜道に気をつけて。
また何時でもお店来てね」
にこやかに笑って見せた後、紬さんは私の掌に絡めた指をそっと離した。
それをとっさに追いかけそうになって、私は自分の掌をぎゅっと逆の手で握りしめる。
「あっ、あの……!」
「ん?」
「そう言えば……何か、話したいことがある言ってませんでした?」
「ああ、悪徳セールスマンに引っかからないようにって言っていた時?」
「もう!!その話はいいです!」
私が怒ったような顔を作ると、彼はフッと楽しげに笑みを零した。
この時はまだ、あんなことを言い出すなんて、これっぽっちも思っていなかったのだ。
気を取り直して、もう一度尋ねる。
「ええと……それで、話ってなんなんです?」
目の前の男……紬さんはにっこりと口角を上げ、爽やかな笑顔を見せた。
口元には色っぽい黒子ほくろがあり、思わず目を奪われる。
「ああ、ごめんごめん。うっかり目的を忘れるところだった。俺たち、結婚したから」
「…………はぁ!?」