観念して、俺のものになって



「だと思った。実は俺も彼女がいないんだ」

「…………」

「だから、俺たちが結婚しても誰にも迷惑はかからないと思わない?」


彼のいかにも『素晴らしいアイデアだろう』と言わんばかりの笑みに、目眩がしてきて額に手を当てた。


さっき結婚しようとか言って茶化してたけど、まさか本当に籍を入れてたなんて一体誰が想像できる?

何をどこから話していいか分からず、それでも何か言わなくちゃという気力だけで言葉を絞り出す。


「え……?ちょ、ちょっと待ってください。貴方、自分が何言ってるかわかってます?それに、この前の届けはフリで書いたはずですよね?」

「フリで書くつもりだったけど、書いてる途中で気が変わった。そもそもフリじゃなく、本当に結婚してしまえばああいう手合いはもう近づいてこないなって。


その言葉を聞いて、絶句した。

そして、次に腹の底から煮えたぎるような怒りが湧いてくる。


それじゃ、私の気持ちはどうなるのよ。
紬さんに都合の良いことしかないじゃない。

要するに、ストーカー対策のために入籍させられたってこと!?


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