円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
「くだらない。俺たちが善い行いをしてイメージアップして何の得がある。おまえら貴族が襲われたくないからって『いい人』を押し付けるな」
 キースは黒髪をガシガシ掻いて呆れている。

「簡単に襲えそうな馬車しか狙わないんでしょう?弱い者いじめなんて卑怯よ。試しにビルハイム伯爵家の馬車を襲ったらいかが?」

「お頭、ビルハイムって言えば、騎士団長の名前ですぜ」
 ダークグレーの髪の手下、ジェイが口を挟んできた。
「俺たち山賊を見つけたら、大人なら片っ端から殺して、子供なら連れて帰って大鍋で煮て食べているって噂の」

「ああ、知ってる。俺の弟も、10年前にそいつに食われたはずだ」

 ちょっと!
 食べるわけないでしょう!?

 どうやら山賊業界では、お父様のイメージは最悪で、「鬼畜」だと思われているらしい。


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