円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
第2章 鑑定
 王立高等学院は、ある程度「無礼講」となっている。
 その理由は、生徒の中に貴族ではない平民もいるためだ。
 王太子と机が隣同士になったがために無礼なことはしていないかとビクビクして勉強に集中できないということがないようにという配慮で、学院内ではフランクな言葉遣いや付き合いをしていいことになっているし、教師も身分や出自に関係なく生徒に接することが義務付けられている。

 この「ある程度」の匙加減が難しくて、実家の身分が高い者ほど「俺は公爵家の長男だぞ!」という風に出自を振りかざしたがる傾向がある。
 貴族であれば親がお金に物を言わせて入学できるこの学院の授業料は一般庶民には到底支払えない金額なわけで、この学院に通う平民出身の生徒は全員がとても優秀な学費全額免除の特待生だ。

 我が国は教育熱心なことで有名で、国王の直轄領だけでなく、各地に王立の「初等学院」がある。
 運営は税収で賄われており、初等教育は国民全員が無償で受けられる仕組みになっているため、我が国の識字率は高水準を維持している。

 高等学院は、初等学院で学問や魔術など、さまざまな分野で優秀であると認められ学院長の推薦を受けられれば特待生として学費も生活費も無償で卒業まで学べるシステムになっている。

 そしてこの高等学院には、入学試験のかわりにおもしろいテストがある。
 それが、鑑定士による「適正鑑定」だ。

 将来、どういった職業に適性があるのかというのを鑑定してもらうのだ。
 これは特に、専門職を家業としている家門の子供にとっては大きなプレッシャーになるらしい。
 王室付の魔術師を継がなくてはならないのに、魔術師という鑑定結果が出なかったらどうしようか…という具合に。

 しかし鑑定結果を、たとえ国王陛下に尋ねられたとしても正直に答えなくていい規則になっているし、その結果通りの職業に就かなくてはならないという拘束力も一切ない。
 ただし、鑑定結果を偽って利益や高い地位を得るようなことをすれば、法律で罰せられる。
 
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