円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
「だからステーシアは、これからも殿下のことをお守りしつつ、決して殿下より先に死んではならないぞ。わかったか」

「はい!」
 大丈夫よ、わたしはタンクでアサシンでスパイだもの!
 
「もっと状況判断を磨いて危機回避スキルを上げるために、本来ならば騎士団の訓練生になってもらうのが一番なんだが、騎士団の上官たちは、もうおまえを預かるのは嫌だと言ってきた」

 そ、そんなあぁぁぁっ!
 トラブルメーカー認定されてしまったの!?

「だから、私とレオンで個人的に指南していこうと思う。それでどうだ」 

「まあ素敵っ!よろしくお願いします!」

 お説教をされるのだと思っていたら、こんなワクワクする提案をされるだなんて、レイナード様のお側を離れるわけにはいかないわね。
 婚約者で居続けるかどうかは、ナディアと一体何があったのかをレイナード様に確認してからになるけれど。


 そしてわたしは父に、行方不明だった間に山賊のアジトで過ごしていたことを話した。
 彼らは、根はいい人たちばかりだということも。
 わたしの命の恩人である彼らがもしも助けを求めてきたら、力になってほしいとお願いすると、父は「もちろんだ」と大きく頷いてくれた。

「ねえ、お父様、ひとつ確認なんだけど…人間の子供を大鍋で煮て食べたことなんて、ないわよね?」

「――っ!?あるわけないだろう!」
 
 唐突な質問に心底驚いている様子の父を見て、鬼畜ではなかったことに安堵したわたしだった。


< 143 / 182 >

この作品をシェア

pagetop