円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
第15章 兄弟
 ルシードは、ほんの少し会わなかった間に急に背が伸びていた。

 グリフォンの羽を持って魔導具研究室を訪れてみたら、わたしと同じか少し背が低いぐらいだったはずのルシードをやや見上げる状態になっていて、あんぐり口を開けてしまった。

「どうしたの、ルシ?妙な魔法で細長くなっちゃったの?」

 まさか!といってルシードが笑う。
「16歳でやっと成長期が来たみたいで、毎朝起きるたびに背が伸びている気がするんですよね」

 ルシードの足元を見ると、制服のズボンから細い足首がにょっきり出ている。

 やっとじゃないわ、あなた本当は14歳なんだもの。
 いま成長の適齢期真っ只中なのよ!

「ルシ…あなたきっと、とんでもなくかっこよくなるわよ」

 あなたのお兄さんみたいにね。
 思わずそう言いそうになったけれど、それを「シア」といつもより低い声で呼ぶレイナード様に止められた。

 ひとりで行くと言ったのに、レイナード様はどうしてもついて行くと言って聞かなかったのだ。
「今、聞き捨てならないことを言ったね?『とんでもなくかっこいい』っていうのは、俺よりもかっこいいということかな?」

 なに張り合ってるんですか!

「レイ、あなたがお花を見て綺麗だと思うのと同じよ。この蕾はきっと大輪の花を咲かせるだろうと思っただけよ」
 あら、自分で使ってみると、これって便利な言い訳ね。

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