円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
「もう体が大人に近くなったわたしたちにはアマガエルじゃ小さすぎたみたい。ウシガエルを探すべきだったわ」

 今日の反省を口にすると、リリーに呆れられてしまった。
「大きさの問題じゃないでしょ。カエルを使って騒ぎを起こそうだなんて、悪役令嬢じゃなくて鼻たれ小僧のすることよ?」

「あら、そうなの?」

「ステーシアさんて、しっかりしていそうでどこか天然よね」
 マーガレットには言われたくないわ。

 学院内ではすでに、王太子の婚約者がちょっとおかしくなったという噂が立ち始めている。
 趣味の悪いドレスをとっかえひっかえ見せびらかすように身に着け、目も眉も吊り上がって見える派手な化粧をして、行動や発言も突飛で下品になったと。

 まさかあれで心変わりした王太子の気を引くつもりなのかと笑う者もいれば、王太子の浮気のせいで気がふれてしまったのだろうと心配してくれる者もいる。
 いずれにせよ、ステーシア・ビルハイムはもうまともではないと皆が思っているのだ。

「悪役令嬢」というよりは「頭がおかしくなった令嬢」になっているようだけれど、例えばもっと定番の、噴水に突き落とすような直接ナディアに危害を加えるイジメは性に合わなくてできないから、もうこの際、頭がおかしい方向で押し通すしかない。

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