円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
第5章 学年末パーティー
 レイナード様に嫌われる悪役令嬢になりきれているのかわからないまま、もうすぐ学院での1年が終わろうとしている。

 結局あのあとも勉強会には積極的に参加した。
 貞淑な婚約者でいた頃には、足並みをそろえるように気を遣いながら進めていた演習課題も、もうそんな気遣いなんてしてやらないわ!と、自分のペースでガシガシ解いてみせた。
 そして「あら、みなさんこんな問題に手こずってらっしゃるの?」という態度をとったのに、ナディアからもレイナード様からも「すごい」と褒められてしまった。

 勉強会のあとのお茶の時間に、お菓子を行儀悪く食べてやろうとマカロンを一口で全部頬張ってみせると、レイナード様は「リスみたいだね」と笑うし、カインとナディアは、そんなに腹ペコならどうぞと自分の分をわたしに分けてくれた。

 なんか違う……。
 なんか違うんですけどっ!?


 進級テストも終わり、あとは週末の学年末パーティーが終われば1か月の長期休暇に入ることになっている。
 この日は、最後の勉強会だった。

 いつもの教室へ行くと、レイナード様とカインが言い争っているような声が聞こえて、わたしはまたドアに手を掛けたまま動きを止めた。

「はあっ?シアに好きだと言え!?何言ってるんだ、そんなこと言えるわけないだろう!」
 レイナード様の声は随分と気色ばんでいる。

 きっとカインに言われたのね。
 婚約破棄だなんて馬鹿なこと言わないでステーシアとの婚約を継続しろ。嘘でいいから好きだと言っておけば、喜んですがってくるだろう。
 そんなところかしら?

 そんなのまっぴらごめんだわ。

 勢いよくドアを開けると、驚くレイナード様と、気まずそうにするカインとナディアの顔が見えた。

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