円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
「じゃあ、見えないようにメガネを外しておけばいいわ」
わたしは有無を言わさずルシードの野暮ったい黒縁瓶底メガネを奪った。
すると驚いたことに、切れ長で涼やかなとても綺麗な目が現れたではないか!
あのときのボサボサ頭とは違い、今日はパーティー用に黒髪をワックスで整えていることも相まって、とんでもない美少年になったルシードに周囲も気づき始めて「あれは一体誰だ」と噂し始めている。
「ルシ、あなたとんでもないものを隠していたわね」
「ルシって誰?」
「あなたのことに決まってるでしょ!さあルシ、ダンスが始まるから行きましょ」
「待って!何も見えないんだけど?」
取り上げたメガネをポケットに入れると、にっこり笑ってルシードの手を取った。
「大丈夫、わたくし、リードには慣れていますのよ」